SEO日記 一喜一憂 (仮題)

SEOのエンジニアとかコンサル等。Google、Yahoo、自社サイト、SEM、ネットショップとか何でも来い。SEOはマーケティング。

チケットキャンプ(チケキャン)の閉鎖とクラウドソーシングと音楽業界の話【追記あり】

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チケキャンの閉鎖の件は中の人から少し漏れてたのですが、やっぱりと言うか、社内とか別グループ内では法的リスクについてオフィシャルではない形の指摘はあったものの、当局からのアクションがあるまでは動かないのがWebのやり方なのか。
 
これも、音楽・芸能業界がサカナクション山口一郎さんを筆頭にロビー活動を通して『高額転売にNO!』というキャンペーンを通して明確な意思表示をしたことで動いたのかな、とも思います。
 
この辺り、チケット業界の人に少しヒアリングしてみたものの、誰もが『需要があるんだから間違ってはない』、『これが許されないルールの方がおかしい』という意識で統一されていて、「あぁ、これはいつかは叩かれるわ」と思った日が懐かしいです。

 

2016年のWelq休止(2017年閉鎖)に続き、Webのルール(リーンスタートアップをエクスキューズに、とりあえず作って動かして後から方針転換)でSEOをゴリゴリに推し進めて突き抜けようとしたメディア、サービスが2社とも、ビジネス的な側面では一定の成功を収めるも市場の変化という大局的なカーブを曲がりきれずにアウトに膨らみ、日本国憲法という厚い壁にぶつかり盛大に大破したのを見て「そりゃそうだよな」以外の感想は特にありません。
 
皆が希望を託したアイルトン・セナと比較するまでもなく、皆がいつかこうなるだろうというエックスデーが来た、それだけの事ですので熱くならずに心静かに考察してみたいと思います。

 

SEO視点から見たチケットキャンプ

 

ここからSEO的な話になるんですが、チケットキャンプは非常に強かったという認識です。最古参のチケット流通センター(通称:チケ流)や先発のチケットストリート(通称:チケスト)がSNSや口コミなど色々な手法でプロモーションする中、ガッツリSEO視点でコンテンツを大量投下していき、PVベースで一気に逆転していきます。

(後からチケストが同様の手法で追いかけるも一度着いた差は埋まらずに事業縮小へ)

 

ここで嫌でもWelqと同じように見えてしまうのが、ランサーズやクラウドワークスと言ったクラウドソーシングを使っていたという点です。

違う点と言えば、直接的にキーワードに関連するコンテンツを大量投下していたWelqDeNAに大して、チケットキャンプが行った策は主に以下の2点

 

1.販売チケットで市場が大きいジャンルを1つのメディアとしてチケキャン内のカテゴリーの下にぶら下げ、メディア側からチケット側にサイト内リンクを多数設置。

 

2.実際には転売在庫が無いイベントのチケットもイベントがオフィシャルで発表されたらすぐにチケキャン内にイベントページを用意し、検索した人に対する受け皿を用意。 

 

当時の記憶では確か月間に500記事くらいを制作し、さらにイベント・チケットページも全て網羅する勢いで作っていたはずです。

 

懐かしい記事が出てきたのでお時間のある時にでも見ていただければ、盛り上がっていた当時の温度感が伝わるかもしれません。

 

thebridge.jp

info.lancers.jp

 

【追記2】

2017年12月28日の記事公開後にページが削除されたのでキャプチャをご用意いたしました。画像は取得できなかったですが、フンザの方が社の入り口で撮った写真が表示されておりました。↓f:id:kiku0429:20171229132702p:plain

【追記2以上】

 

ちなみに、>チケットキャンプでもちゃんと募集しております。

 

1番のチケットジャンルメディアについて

検索エンジンからのボリュームが大きくチケット単価も高いジャンル「ジャニーズ」「韓流」「宝塚」「EXILE」「ライブ」などを独立したメディアとしてWordPressで簡単なテンプレを使って作成し、その記事作成をランサーズやクラウドワークスに発注していた。

 

メディアは初期からあったのが『ジャニーズ通信』『EXILE通信』『K-POP韓流ウォッチャー』『アイドルラバーズ』『ビジュアルマニア』『宝塚歌劇倶楽部』の5つで、その後『スポフリ』『ポイ☆スタ』『舞台に恋して(ブタ恋)』『みんなのセトリ』などが追加されていった。ブタ恋は2.5次元ミュージカルの盛り上がりもあり、取り扱い金額も高かったようです。

これらは、すでにどのサイトも閉鎖や休止となっていてチケキャン全ページのフッター内にあったメディアへのリンクも全て無くなっています。

 

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※現在のサイトに表示されている文言

 

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※以前フッターにあったリンク(赤枠はnoindexが付いている)

 

ちなみに、『オタキャンプ』というオタグッズのフリマサービスについては現在も継続中の模様。

オタキャンプ コンサート ライブグッズ専門 日本最大級のフリマサイト

 


このように、戦略的に物理でSEOをぶっ叩くような事をすることだけであれば、個人的には「悪用する」とは言えないと思うのですが、狙うコンバージョンが『チケットの転売の促進』ということで、検索エンジンでチケットを探す人の市場を絨毯爆撃のように押さえていくのは、戦術としては悪くないが、戦略としては最悪だったと思います。

結果、チケキャントップページの一階層下のチケットのカテゴリーが非常に強くなり『ジャンル+チケット』の検索結果ページに占める割合がグングン増して行きました。

 

※「ジャニーズ」「宝塚歌劇」といった商標登録の言葉をメディア名としてドーンと使ったことに対する法的リスクの問題もありました。

 

2番の無在庫チケットページの作成について

『ジャンル+チケット』の検索結果とはチケットを探す人が見るページであり、金額を無視すれば検索者の意図は「とにかくチケットが欲しい」であり、それがオフィシャルだろうがローソンだろうがイープラスだろうがヤフオクだろうが、紙チケットだろうが電子チケットだろうが、手元にチケットがあり目的とするコンサートやライブが見られれば、その途中経過はなんだっていいのが実情です。

 

ライブ参戦の確率を上げるため、まずはオフィシャルでの先行抽選、ファンクラブ抽選、先先行抽選などから全チケットサービスに会員登録をしてさらに友人を動員して臨みチケットの確保を目指すわけです。しかし惜しくも落選した人達は諦めきれずに一般販売を待つことになり検索をしてチケット申込情報を調べるのですが、そんな時にオフィシャルのすぐそばに ●●のチケット譲ります なんてタイトルを見つけてしまえばついクリックして見てしまうのが人情です。

 

そこにまだチケットが出ていなかったとしても「誰かが行けなくなってここで売るかもしれない」と思えばSafariのタブを残して定期的に見るくらいの事はしますし、チケットが登録された時にプッシュ通知が来るよう会員登録くらいはしてしまうでしょう。(そして直帰率が下がり滞在時間も上がります。)

 

しかしチケットに関するキーワードはエンタメ業界も含めてオフィシャルサイトから各チケットサービスにイベントを紹介するメディアのページまでもが鎬を削る激戦区。ここで1ページ目を死守するには超先行でチケットページを公開していかなくては埋もれてしまうというSEO視点が入ってきます。

 

ページ内容で差別化がしづらいため、Google先生は同じような内容であれば先の情報の方を優先することが多いため(キーワードによって様々)とにかく他社より速くページを公開することを是としていたようです。

実際にそれで1ページ目を獲得しているところをよく見かけました。

 

(ちなみに、Twitterでの受け渡しについては心あるファン同士により定価+手数料などでの売買が一般化しており、高額を要求する人はファンの間で村八分になったりと自治ができていました。)

 

チケキャンのマインドと二次流通の難しさ

 

それもこれも全部、Webだけで仕事をしてきた人達特有のマインドだったように思います。

実際に近しい人から話を聞いたことがありますが、罪悪感はほぼ無く社員レベルの人でも『そこに市場があり利便性を提供できるのだから悪いことではない』という考え方をしており、まぁ確かに一理はあるけど一理しか無いのが問題なんだよなぁ。というところを感じていました。

 

この点についてはダフ屋行為と二次流通の明確な線引きが分からないというルール不整備の問題もあり、業界としてどうしていくか?も今までは定まっていませんでしたし、一部では必要悪という考え方すらありました。なぜならそこには確かに 急にイベントに行けなくなったという人達が存在していながらその人達のオフィシャルな受け皿がどこにも無い という状況が続いていたからです。

 

また、興行主としては転売屋だろうが、自分たちの発売するチケットが一旦でも完売することが精神衛生上から非常にありがたいという側面もあります。自分たちのポケットにお金が入ってくる金額が分かればあとは制作に専念できます。

それでいいという時代も少しありましたが、しかし当日会場に人が8割ほどしか入っていないと、自由席でみんなが前方に集まっていればまだしも、指定席で歯抜けのようにまばらな客入りだとステージからは思った以上にチケットが売れていないように見えてしまいます。

これはアーティストからするとテンションが激しく落ちる事につながり、パフォーマンスの質の低下を招きます。結果、実際にイベントに参加したファンからの評価も上がらず、次回以降のコンサートやライブの集客に地味に響いてきます。

これが続くと、ライブは生物なんて言葉がありますがリアルに転売屋すら手を出さないチケットとなり、会場の規模も下げざるを得ず、人気のないアーティスト誕生に繋がります。

 

単純に音楽業界や芸能が古いと言い切ることでは誰も幸せになりません。確かに効率という面では悪いかもしれませんがマンパワーをかけて人と人がぶつかり合って生まれるエネルギーが作品という形で昇華され、素晴らしいパフォーマンスとなって一般の方に届いていくという流れは数値化できないものであり、これを無くして音楽が盛り上がるとは思えないからです。CDが売れないとしても他の方法で生き残り、素晴らしい作品とパフォーマンスをみんなに届けたいという熱量を絶やす事は日本のエンタメ業界全体にとってマイナスでしか無いので、その意識が無い限り調整というレベルでは何もできなかったのでしょう。

 

www.itmedia.co.jp

 

 

ファンにとってもアーティストにとっても、二者を繋ぐ業界にとってもいい形にするべく徐々に各社がオフィシャルな二次流通の場を作ってきていますので、今後はこちらが主流になってくれることを願ってやみません。

 

とりあえずチケトレは絶望的に使いづらいから至急なんとかしろ。

 

Webとリアルについて思う細かい雑感

ここ数年は、Webとリアルの距離が限りなくゼロに近いところまで近づいてきていて、ビジネスをする上でルールがバッティングする場面も増えてきました。Webだけで生きている人からすれば、自分たちのルールは新しく、古き悪しきルールをリプレイスしていくんだと、むしろ一種の正義感にもかられたような無垢な人が多い印象ですが、全くゼロから市場を発見したのではなく、現在の市場をリプレイスしたいのであれば、それなりにその市場に対するリスペクトや知見のある人からの意見を参考にするなど、場合によっては社外取締役や相談役として業界とのパイプを担ってもらったり、二次流通の場合なら政治へのロビー活動も必須だったのではないでしょうか。

 

そういえば2年前のサマーソニックで、ミクシィがでかいモンストブースをメッセ内に設置し、その一画にチケキャンブースも作ったことで、音楽・芸能業界からサマーソニックを運営するクリエイティブマンが怒られたなんて話もフワッと耳にしていました。

 

 
最古参のチケット流通センターと昨年に規模を縮小したチケットストリートはどうなってしまうんでしょうか。また、転売屋はどこへいくのか、チケットを買えなかった人達は次はどこで探すのか。MERYロスのように、チケキャンロスを招くのか。

 

 

12月吉日

メルカリの方向を眺めながら

皆さま良いお年を。

 

P.S

国内No1の安心チケット売買サイトの文字が悲しく残ります

国内No.1の安心チケット売買サイトチケットキャンプ

 

【追記】

これは完全にアウトでした。高額転売をする転売業者とグルと言われても仕方ないレベルです本当にありがとうございました。

>チケキャン、手数料ゼロで転売業者優遇 自ら規約違反か (朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

 

 

参考資料